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ロックバランシングアートに出会える京都人憩いの場「鴨川デルタ」
高野川と賀茂川が合流してできる鴨川は、京都を象徴する美しい河川。合流地点「鴨川デルタ」付近で話題のロックバランシングアートや鴨川の楽しみ方などをご紹介します。
京都市民の憩いの場「鴨川デルタ」
京都市内を北から南に流れる鴨川(かもがわ)は、賀茂川(かもがわ)と高野川(たかのがわ)が出合って流れる川。長い歴史と伝統を育んできた京都のシンボルのような川です。
2つの川が合流する地点では三角州が形成され「鴨川デルタ」と呼ばれています。美しい景観と水辺の自然を楽しめる京都市民憩いの場です。
そんな鴨川デルタ近くの川岸で、不思議な石のオブジェを発見。「この石のアートはなに?」「どんな人が作っているの?」と、さまざまなメディアでも話題になっています。
川のほとりで注目を集める男性。一体どんな人?
石のオブジェ製作者は、石を積むアート・ロックバランシングアーティスト池西大輔(いけにし だいすけ)さん。日中は整体師として働いています。
池西さんがロックバランシングを始めたのは、2年半ほど前。1年前からは毎日制作し、平日の8:00頃にスタートし20分ほどで作品を仕上げ、仕事に出かけるのだとか。日曜や祝日はさらに時間をかけるそうです。
絶妙のバランスを保っている作品。完成した後、水で濡らすと石の模様が鮮明になり、迫力が増すそうです。
石を積むことの楽しみとは? と池西さんに尋ねてみました。
池西さん:「さまざまな人の反応を見るのも楽しいですし、自分のいないところで誰かがが喜んでくれることを想像するのも、続けるモチベーションになります。
もちろん、作ったものは強い風や子どもたちのちょっとした接触で壊れてしまいますが、形あるものが壊れるのは普通のこと。できあがった作品そのものより、作っている過程が一番の楽しみなので構いません」
さらに池西さんは話を続けます。
池西さん:「昔は集中するあまり、自然と周りの音を遮ってしまっていましたが、制作を作り続ける過程で次第に『心の余裕』を得ることができました。風の音や子どもたちの声が、耳に入ってくるようになったんです」
今では、周囲に人がたくさん集まっていても、平常心のままで石を積むことができるようになったそうです。
「ご苦労はありますか?」と尋ねると「まったくありません。石を積んでいると感覚が研ぎ澄まされ、楽しくなるんです。なので、上手くいかなくてもイライラはしません」と答えが返ってきました。
とてもリラックスしてロックバランシングを楽しんでいる様子が伝わってきます。
ロックバランシングに挑戦してみよう!
興味のある方は、ロックバランシングに挑戦してみませんか? 私も池西さんからアドバイスを受けながら初挑戦。
こちらは池西さんの作品。石を選ぶコツは「土台には平らなものを選ぶ」「一番上には作品の顔となるような石を選ぶ」ことだそうです。
さらに、石を積むときにも、「石の凹凸を利用する」「無理をせず最初は簡単なものから」「今の自分の力量を知る」「諦めない」「集中する」などいくつかポイントがあります。
私が面白いと思ったのは「呼吸は止めないで」という一言。息を止めて手に力が入りすぎてしまうと、崩れやすくなってしまうんです。
子どもたちも池西さんからアドバイスを貰っていました。「自分ができそうな石を探して、まずやってみよう。諦めずに続けてごらん」と、学校で先生からかけられる言葉に似ていますね。
無理をせず、自分の力量を知ること、諦めないで集中すること、呼吸は止めず、1つ1つ地道に積み上げていくこと……。池西さんの教えを「生き方」に当てはめて考えると、哲学的な要素を含んだものに聞こえてきませんか。
石を積むことは、私たちが自分の人生を積み上げていくことと、繋がる部分があるのかもしれません。
上の写真が初めて作った筆者の作品です。河原の石は意外と温かく、またひとつひとつ異なる表情をしています。
「土台を安定させて、上の方は少し冒険してみよう」と時間を忘れるほど熱中。一番上の石を積み終えたときには大喜びしてしまいました。
ただし、石は突然崩れてしまうこともあります。無理をせず、安全第一を心がけて行ってみてくださいね。
人を惹きつけるロックバランシング
積まれた石が河原にある。ただそれだけのことですが、絶妙なバランスのロックバランシングを目にすると「すごい! どうやって作ったの?」と大きな驚きを感じます。と同時に「自然と人がやさしく共生している」ような印象も抱きました。
池西さんは以前、50歳代の女性から「最近落ち込んでいたのですが、ここで石のアートを見かけてからなんだか元気になりました」と声をかけられたことがあるそうです。
石を積み、河原を去ってから壊れてしまうまでの時間だけでも「誰かに作品を楽しんでもらえたら」という池西さんの思いが、見る人の心を癒しているのかもしれません。
そんな池西さんの周りには、いつしか人の輪が……話しかけると気軽に答えてもくれます。作品はもちろん、制作中の様子を撮影することやSNSに投稿することもOKとのこと。
海外からの観光客も興味深げに見ている様子。中国人留学生からは「すごい!」「とても難しそう」「忍耐力が必要ですね」との声が上がっていました。ぜひ世界中に「京都のMR. IKENISHI」を伝えてください。
日々アップデートされる作品は池西さんのinstgramアカウント(daisuke__ism)でチェックできます。
鴨川の楽しみ方
ロックバランシングを楽しんだあとは、鴨川そのものを堪能してみてはいかがですか? 鴨川には「川を渡るため」そして「川に親しむため」に飛び石が設置されている場所があります。その代表的な場所が鴨川デルタ付近。池西さんのロックバランシング作品のある場所です。
特に鴨川デルタの飛び石は人気アニメ『けいおん!』の場面に登場したことでも有名。亀や千鳥の形の石もあり、記念写真の撮影スポットです。
石と石の間は思ったより広く、水量の多い時期もあります。くれぐれも安全に配慮した上で渡ってください。
鴨川デルタへのアクセス
鴨川デルタは、京阪電車「出町柳駅」3番出口から地上に出てから川に降りてすぐの場所。池西さんの作品もこの付近で見ることができます。
徒歩圏内には、世界遺産の下鴨神社(しもがもじんじゃ)や、1869年まで天皇の住居として使われていた京都御所があります。鴨川デルタで遊んだら、周囲を観光してみてもよいですね。
京都市民の憩いの場所であり観光客もほっと一息つける場所「鴨川デルタ」を訪ね、ロックバランシングアーティスト池西さんやその作品を探してみてください。そして、鴨川の自然や景色を思い思いの方法で楽しみましょう。
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In cooperation with 池西大輔(Twitter:@IsmDaisuke)
日本文化、特に絵画や工芸品が好き。福岡、京都、大阪、ベルギー、アメリカを経て現在は神戸在住。座右の銘は「住めば都」。